「自宅を売っても、そのまま住み続けられる」。リースバックはそう説明されることがあります。まとまった資金を受け取りながら、住み慣れた家で暮らし続けられる方法として関心を持つ方が増えています。
一方で、国民生活センターには、強引な勧誘や、契約後の家賃値上げ、想定より安い売却額といった相談が近年増えています。契約当事者の多くは高齢の方です。
この記事では、リースバックの仕組みと4つの特徴、実際にあったトラブル事例、契約前に確認しておきたいポイントを、公的機関の資料に基づいて整理します。
情報確認日:2026年8月6日|株式会社ジェー・トラスト 代表監修
リースバックに関する制度・相談件数・調査結果は今後変更される場合があります。契約を検討する際は、各出典の更新日と、閲覧時点の最新情報をご確認ください。
表記について
出典IDが付く文は、一次資料で確認できる事実です。それ以外は編集上の案内であり、結果を断定するものではありません。当社案内は、株式会社ジェー・トラストからの相談案内であり、公的資料の説明とは区別しています。
この記事でわかること
- リースバックの仕組みと、通常の売却との違い
- 所有権移転・住み続けられない場合がある・家賃負担・買戻しという4つの特徴
- 実際に寄せられているトラブルの相談事例
- 契約前に確認しておきたいポイント
- 家族や周囲に相談しにくいと感じる方への考え方
- どのような場面で選ばれているか、事業者の参入状況
この記事で扱わないこと
個別の売却額・家賃額の算定、契約書の具体的な条項の確認。これらは不動産会社への査定依頼、または司法書士・弁護士にご確認ください。
リースバックとは
リースバックは、自宅を売却して代金を受け取り、その後は買主と賃貸借契約を結んで、家賃を払いながら同じ家に住み続けるしくみです【MLIT-001】。「リースバック・セール」「リースバック・アンド・セール」などと呼ばれる場合もあります【MLIT-001】。
消費者庁は、リースバックを「自宅を売却しても、家賃を支払って借りることで、引越まで住み続けられる自宅の処分の手段」と説明しています【CAA-001】。「処分の手段」という言葉のとおり、所有権は買主に移ります。
確認ポイント
まとまった資金を得る方法には、リースバックのほか、通常の売却、不動産担保ローン、リバースモーゲージなどがあります【MLIT-001】。住み続けながら資金を確保できる点はリースバックの特徴ですが、ご自身のライフプランに合わせて、これらの方法とも比較・検討することが重要です【MLIT-001】。
リースバックの4つの特徴
所有権は買主に移る
住宅の所有権はリースバック事業者に移るため、通常の賃貸と同じく家賃を払って住むことになります。設備を設置する場合に事業者の承諾が必要になるなど、これまでと同じ使い方ができるとは限りません【MLIT-001】。
住み続けられるとは限らない
賃貸借契約が定期借家契約の場合、契約で定めた期間の満了により契約が終了します。貸主が再契約を拒んだ場合は退去する必要があります。事業者が将来の再契約について意向を示していても、それは約束ではなく、住宅が第三者に売却されて貸主が変わった結果、再契約を拒絶される可能性もあります【MLIT-001】。
税金は不要になるが、家賃の支払いが生じる
自宅を所有している場合にかかる固定資産税等の税金や修繕費等は、契約条件によっては不要になります。ただし、これらの費用も踏まえて家賃が設定されているため、毎月の家賃は継続して支払う必要があります【MLIT-001】。
買戻しは当然の権利ではない
契約条件次第では、一度売却した自宅を買い戻せることもあります。ただし買戻しは当然の権利ではなく、事業者との約束ごとです。買い戻せる条件や買戻し価格を契約前に確認していなかったために、トラブルになった事例があります【MLIT-001】。
こんなトラブルに注意
リースバックの契約に関する相談は、全国の消費生活センター等に寄せられており、2019年度の24件から2024年度には239件へと増加しています。契約当事者の約7割が70歳以上です【NCAC-002】。
強引な勧誘によって、望んでいない契約をしてしまう
不動産業者から突然の電話や訪問を受け、長時間にわたる勧誘や強引な勧誘によって、本来望んでいない契約をしてしまうケースがあります。契約後に冷静になり、親族や知人に相談してはじめて、売却金額の安さに気づくこともあります【NCAC-001】。
契約内容が十分に理解されないまま契約が進む
解約時の違約金について勧誘時には説明されていなかった、家賃が契約から数年で当初の2倍近くに値上げされた、といった事例があります。契約後にそのまま住み続ける際に重要な家賃の条件や違約金について、十分に認識できないまま契約している例がみられます【NCAC-001】。
「住み続けたい」というニーズに合わない契約がなされる
「そのまま住み続けられる」「ずっとこの家に住める」というメリットのみが強調される勧誘がある一方、リースバック契約は無条件で住み続けられるものではありません。家賃が支払えなくなれば退去しなければならず、借金返済や生活費の工面のために契約すると、その後の収支バランスが悪化し、住み続けることが困難になるリスクがあります【NCAC-001】。
判断能力が低下した高齢者が契約してしまう
認知症など判断能力が低下していると思われる高齢者が、相場よりかけ離れて安い価格で自宅を売却させられるなど、不利な契約をさせられた事例が複数寄せられています。周囲が気づきにくく、トラブルが潜在化するおそれがあります【NCAC-001】。
確認ポイント
自宅を不動産業者に売却する場合、宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフは適用されません。売買契約が成立すると、無条件で契約を解除することはできず、解除には違約金が必要になることが多くあります【NCAC-001】。契約する前に、家族や友人など信頼できる方に相談し、一人で対応しないことが勧められています【NCAC-001】。
契約前に確認したいポイント
国土交通省のガイドブックは、リースバックを検討する際の確認ポイントを示しています【MLIT-001】。
- 契約を急がされても、その場でサインしない。 家族や親族に相談してから決めることを伝える
- 売却価格が相場から外れていないか、複数の事業者に意見を聞く。 リースバックの買取価格は、賃貸借契約が付いた状態で査定されるため、通常の売却(空き家渡し)より安くなるのが一般的です。国土交通省の実態調査では、買取価格は周辺相場の「6〜7割」と回答した事業者が多数を占めています【MLIT-003】。提示された価格の根拠を必ず確認しましょう。
- 売却で受け取る金額と、住み続ける期間に支払う家賃の総額を比較する。 手元に残るお金がいくらか、契約前に計算する
- 買戻しを希望する場合、いつまでに・いくらで買い戻せるかを契約書で確認する。 買戻し価格が自分の払える額かも検討する
- 契約が定期借家契約か普通借家契約か、契約期間と更新・再契約の条件を確認する
- 設備が壊れた場合の修繕費負担、退去時の原状回復費用の扱いを確認する。 契約期間中に亡くなった場合、家族・親族が相続によって原状回復費用等の責任を負う場合があります【NCAC-002】。特殊清掃を伴うケースでは、この費用が敷金・家賃とは別に発生することがあります。国土交通省のガイドラインでは、特殊清掃等が行われた場合の次の賃借人への告知義務は発覚から概ね3年間とされていますが【MLIT-004】、これはアパート等、入居者の入れ替わりが比較的早い物件を想定した基準です。戸建てや分譲マンションのように近隣の入れ替わりが少ない物件では、ご近所付き合いの中で事実が伝わり、後から告知義務違反を指摘されるケースもあるため、実務上は最低でも10年程度、慎重な対応が必要とされることが一般的です。
- 提示された条件を鵜呑みにせず、複数の不動産会社・金融機関に相談する
当社案内
リースバックによる買取価格は、事業者が賃貸中の物件として査定するため、相場の6〜7割程度にとどまるケースが一般的です。当社では、物件の条件によりますが、投資用不動産として投資家へ斡旋することで、相場の8〜9割程度でのご紹介が可能な場合があります。価格はあくまで物件ごとの個別査定によるものであり、すべての物件で対応できるとは限りません。詳しい条件は個別にご相談ください。
リースバックでご高齢の方がそのまま住み続けられる場合、単身でお住まいの方には、見守り機器(セコム・ALSOK・CSP等)の設置をお願いしており、費用は家賃・管理費に含まれます。仕事などで近くにいてあげられない、一緒に住めないというご家族にとって、体調の変化や自宅内での異変にいち早く気づける仕組みがあることは、大きな安心につながります。万が一、残念な事態となった場合でも早期に発見できれば、ご家族の精神的・金銭的なご負担の軽減にもつながります。
いずれも、契約書に記載された具体的な条件を確認することが基本になります。口頭の説明だけでなく、書面で確認することが重要です。
家族や周囲に相談しにくいと感じる方へ
老人ホームへの入居費用を用意したい、まとまった現金が今すぐ必要だといった事情は切実であるにもかかわらず、家族や周囲になかなか相談しづらいと感じる方もいらっしゃいます。国土交通省が事業者を対象に行った調査では、リースバックの主な利用動機として「生活資金の確保」(76.7%)、「高齢者施設への入居資金の確保」(50.0%)が上位に挙げられています【MLIT-002】。
一方で、家族への相談には難しさもあります。リースバックの仕組みを知らない家族から、事情を説明する前に反対されてしまう場合や、将来相続を予定している家族から「実家は残しておいてほしい」といった形で売却に難色を示される場合もあります。相続を予定する側にとって、自宅の売却は将来受け取る財産が減ることにもつながるため、心配される背景には様々な事情が考えられます。
契約前に家族や信頼できる方に相談することは、契約内容を客観的に見直す機会になるとして勧められています【NCAC-001】。まずは仕組みと選択肢を正しく理解したうえで、ご家族にも状況を共有しながら、一緒に検討を進められる状態を目指すことが大切です。
とはいえ、実際にはどう説明すればよいか分からなかったり、一度話してみたものの取り合ってもらえなかったりすることもあると思います。
当社案内
どう伝えればよいか分からない、すでに話してみたものの取り合ってもらえなかった、という場合もご相談ください。ご家族・ご親族のお考えも尊重しながら、双方にとって納得できる方法を一緒に考えます。まずはお話をうかがう機会をいただければ、状況に合ったご提案ができると考えています。匿名でのご相談も可能です。お気軽にお問い合わせください。
どのような場面で選ばれているか
リースバックの契約件数を国が集計した公式な統計はありません。 参考になる情報として、事業者への調査結果と、実際の活用例を紹介します。
近年の状況
国土交通省が令和6年12月から令和7年1月にかけて、業界団体加入の宅地建物取引業者586社を対象に行った調査では、リースバックに「取り組んでいる」事業者は60社(約10%)、「今後取り組みたい」事業者は145社(約25%)でした【MLIT-003】。
同調査では、リースバック利用者の平均居住期間は「0年」を含む5年以下が全体の約8割を占め、賃貸借契約の更新をした利用者の割合について「0割」(更新した利用者がいない)と回答した事業者が約6割にのぼりました【MLIT-003】。多くの利用者が、比較的短期間でリースバックによる居住を終えている実態がうかがえます。
活用例
国土交通省のガイドブックでは、次のような活用例が紹介されています【MLIT-001】。
- 高齢者施設への住み替え資金として。 施設入居まで自宅で暮らしながら、入居一時金などまとまった資金を準備する
- 実家の建て替え資金として。 二世帯住宅への建て替えを決めたが、建て替えが完了するまで今の環境で暮らし続けたい場合
いずれも、住み続ける期間を限った定期借家契約と組み合わせて使われています【MLIT-001】。「住み替えの予定がある」「期間を区切って資金が必要」という場面では選択肢になり得ますが、住み替えの意向がないまま安易に所有権を手放すことは勧められません【CAA-001】。
よくあるご質問
リースバックとリバースモーゲージはどう違いますか
リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて融資を受け、契約者が亡くなった後などに自宅を売却して返済する方法です。所有権はご本人に残ります。一方リースバックは、契約時点で自宅を売却し所有権が買主に移る点が異なります【MLIT-001】。
契約すればずっと住み続けられますか
契約条件によります。賃貸借契約が定期借家契約の場合、期間満了時に貸主が再契約を拒めば退去が必要です。住宅が第三者に売却されて貸主が変わることもあります。契約前に、契約の種類と再契約の条件を確認することが重要です【MLIT-001】。
家賃はあとから変わることがありますか
契約条件によります。契約から数年後に家賃が大きく値上げされ、支払えなくなったという相談が寄せられています。契約前に、住み続ける期間にわたって家賃を支払い続けられるか検討することが勧められています【NCAC-001】。
買い戻すことはできますか
契約条件次第では可能ですが、当然の権利ではありません。買い戻せる条件や買戻し価格を契約前に確認していなかったためにトラブルになった事例があります。契約書に具体的な条件が記載されているかを確認してください【MLIT-001】。
契約後にキャンセルできますか
自宅を不動産業者に売却する場合、クーリング・オフは適用されません。契約が成立すると無条件では解除できず、解除には違約金が必要になることが多くあります。契約前によく検討することが重要です【NCAC-001】。
親が契約してしまったが、判断能力が低下していたようです
認知症などにより判断能力が低下した状態で契約したと思われる場合は、消費生活センター等にご相談ください。消費者ホットライン「188(いやや!)」から、お住まいの地域の窓口を案内してもらえます【NCAC-001】。
売却を決めていない段階でも相談できますか
はい。リースバックのほか、通常売却や買取、当面保有するという選択肢を含めて比較しながらご相談いただけます。
家族に相談すると反対されそうです。それでも検討していいですか
はい、ご検討いただけます。家族がリースバックの仕組みを知らないまま反対する場合や、相続の観点から意見が分かれる場合もあります。まずは仕組みと選択肢を整理したうえで、ご自身の状況に合わせてご家族と話し合う材料にしていただくことも可能です。当社では、契約を急がせることなくご相談を承っています。
この記事のまとめ
- リースバックは、自宅を売却して資金を受け取り、家賃を払って住み続けるしくみ。所有権は買主に移る
- 住み続けられる期間や再契約の条件は契約ごとに異なり、無条件でずっと住み続けられるわけではない
- 契約当事者の約7割が70歳以上。強引な勧誘・家賃の値上げ・想定より安い売却額などの相談が寄せられている
- 自宅の売却にクーリング・オフは適用されない。契約前に家族と相談し、複数の事業者に確認する
- 買戻しは当然の権利ではなく、条件を契約書で確認する必要がある
- 家族の反対は、仕組みの誤解や相続への影響を心配してのこともある。まずは正しい情報を得ることが検討の第一歩になる
当社案内
ここから先は株式会社ジェー・トラストからのご案内です。公的資料の説明とは区別しています。
千葉・東京を中心に、不動産のご相談を承っています。リースバックのほか、通常売却、買取、当面保有するという選択肢も含めて、ご状況に応じてご案内します。契約を急がせることはなく、まずはお話を伺うところから始めます。
査定価格・買取価格・家賃・買戻し条件は物件や契約ごとに異なります。ご希望に沿えない場合があり、居住の継続や買戻しを保証するものではありません。契約内容は書面でご確認いただき、必要に応じて司法書士・弁護士にもご相談ください。
出典・情報確認日
本記事の事実情報は、次の公式資料を実際に確認して記載しています。情報確認日は2026年8月6日です。相談件数、調査結果、制度は変更される場合があるため、各出典の更新日と、閲覧時点の最新情報をご確認ください。
消費者庁
- 資産の運用・処分は取引の仕組みや目的がきちんと納得できてから!/消費者庁【CAA-001】
国民生活センター
- 強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!-本当に「そのまま“ずっと”住み続けられる」契約ですか?-/国民生活センター【NCAC-001】
- 住宅のリースバックの注意点と適切な利用(国民生活 2025年10月号)/国民生活センター【NCAC-002】
国土交通省
- 住宅のリースバックに関するガイドブック/国土交通省【MLIT-001】
- 消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会 第1回資料4「リースバックの現状について」/国土交通省【MLIT-002】
- 不動産取引に係る新たなサービス形態について(資料2・住宅のリースバックに関する実態調査結果)/国土交通省【MLIT-003】
- 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン/国土交通省【MLIT-004】