親が施設に入ることになった。相続で実家を引き継いだけれど、誰も住む予定がない。こうしたとき、多くの方が「まず片付けなければ」と考えます。
ただ、順序を間違えると、かけなくてよかった費用が発生することがあります。片付けや解体を済ませてから相談したところ、そのままの状態でも売却できたと分かる例は少なくありません。
この記事では、実家じまいで先に決めておくこと、期限が定められている手続き、そして家をどうするかの5つの選択肢を整理します。売却すると決めていない段階でも読める内容です。
情報確認日:2026年8月2日|株式会社ジェー・トラスト 代表監修
相続登記や空家法の制度、税の取り扱いは今後変更される場合があります。手続きを進める際は、法務局および物件所在地の自治体で最新の情報をご確認ください。
表記について
出典IDが付く文は、一次資料で確認できる事実です。それ以外は編集上の案内であり、結果を断定するものではありません。当社案内は、株式会社ジェー・トラストからの相談案内であり、公的資料の説明とは区別しています。
この記事でわかること
- 実家じまいで最初に確認する4つのこと
- 相続登記には期限があること(過料の定めもあります)
- 片付け・解体を先に進める前に確認したいこと
- 家をどうするかの5つの選択肢と、それぞれが向く状況
- 空き家のまま持ち続けた場合にかかり続ける費用と、勧告を受けた場合の税の扱い
この記事で扱わないこと
相続税の計算、遺産分割の具体的な進め方、個別の物件価格。これらは税理士、弁護士、または個別の査定でご確認ください。
最初に確認する4つのこと
実家をどうするか考える前に、次の4点をはっきりさせておくと、その後の判断が進みます。
遺言書があるか。遺産分割協議は済んでいるか。 遺言書があれば、その内容が優先されます。自筆の遺言書は、家庭裁判所での検認が必要です。ただし、公正証書による遺言のほか、法務局において保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は、検認の必要はありません【CTS-001】。遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議で誰が引き継ぐかを決めます。この結果が固まらないと、名義も売却も進みません。
名義が誰になっているか。 登記簿上の所有者が亡くなった親のままだと、売却の手続きに進めません。相続人が複数いる場合は、誰が引き継ぐかを決める必要があります。
相続人が何人いて、意向が一致しているか。 共有名義のままだと、全員の同意がなければ売却できません。持分だけを売るという方法もありますが、扱える会社は限られます。
住宅ローンや抵当権が残っていないか。 残債がある場合、売却代金で完済できるかどうかで進め方が変わります。
この4点が固まっていないうちに片付けや解体を進めると、費用をかけたあとで「やはり売れない」「話がまとまらない」という事態になりかねません。
相続登記には3年の期限があります
相続登記の義務化は、令和6年4月1日から始まりました【MOJ-001】。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります【MOJ-001】。遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割の日から3年以内に、その結果に基づく登記をする必要があります【MOJ-001】。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の範囲内で裁判所が過料を決定します【MOJ-001】。
令和6年4月1日より前に相続が発生し、相続登記が未了の不動産も対象です。 この場合、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります【MOJ-001】。義務化の施行前に相続したものであっても、登記が済んでいなければ期限が定められている点にご注意ください。
遺産分割の話し合いが長引き、期限内に相続登記ができない場合には、相続人申告登記という制度があります。自らが登記簿上の所有者の相続人であること等を期限内(3年以内)に登記官に申し出ることで義務を履行できる制度で、特定の相続人が単独で申し出ることができます【MOJ-001】。
ただし、相続人申告登記は申請義務を果たすための制度であり、これによって相続登記が完了するわけではありません。 不動産の名義が申出人に変わるものではないため、売却などの手続きを進めるには、別途、相続登記が必要です。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に登記をすることになります【MOJ-001】。
確認ポイント
登記の状況は法務局で確認できます。遺言書の有無、相続人の範囲、分割方法で判断に迷う場合は、司法書士や弁護士にご相談ください。当社でも、必要に応じて司法書士・弁護士をご紹介します。
片付け・解体を始める前に
「売る前に片付けなければ」「古い建物は壊さないと売れない」と考える方は多いのですが、物件によって判断は変わります。
家財や荷物が残ったままでも売却できる場合があります。 買主が不動産会社であれば、残置物の処分を含めて引き受けられることがあります。片付けを外注すると数十万円かかることもあるため、先に相談したほうが結果的に負担が軽くなるケースがあります。ただし、物件の状態や引き渡し条件によっては、売主側で処分をお願いすることもあります。
解体すると税負担が変わる場合があります。 住宅が建っている土地には固定資産税の住宅用地特例が適用されており、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)では課税標準が6分の1に、一般住宅用地(200㎡を超える部分)では3分の1に減額されます【MLIT-002】。建物を取り壊すとこの特例の対象外になります。売れるまでの期間が読めない段階で解体すると、更地のまま税負担だけが増えることがあります。
建物があることで売りやすくなる場合もあります。 再建築が難しい土地では、既存の建物を利用できることが価値になることがあります。
いずれも立地、建物の状態、権利関係によって結論が変わります。費用をかける前に、現況のまま査定を受けておくと比較ができます。
家をどうするか。5つの選択肢
実家じまいの出口は売却だけではありません。状況によって向く方法が変わります。
| 選択肢 | 向きやすい状況 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 仲介で売却 | 時間に余裕があり、できるだけ良い条件で売りたい | 買主が見つかるまで期間が読めない。内覧の対応が必要 |
| 不動産会社へ売却(買取) | 早く手放したい。片付けや修繕をせずに引き渡したい | 仲介で売る場合より価格が低くなる傾向がある |
| リフォームして賃貸 | 立地がよく、建物の状態も維持されている | 初期費用がかかる。空室リスクと管理の手間が続く |
| リースバック | 売却後もその家に住み続ける必要がある | 所有権は買主へ移る。売却後は家賃の支払いが必要。契約期間や再契約の条件は個別に定まる |
| 当面は保有して管理 | 相続人の意向がまとまっていない。時期を待ちたい | 固定資産税と管理の負担が続く |
親御さんがまだ住んでいて、住み続けたい場合はリースバックが選択肢に入ります。ただし所有権が移り、売却後は家賃が発生する仕組みです。売却価格、家賃、契約期間の条件を含めて検討する必要があります。
すでに空き家で、誰も住む予定がない場合は、仲介または買取が中心になります。時間に余裕があれば仲介、早く手放したいなら買取、という分かれ方です。
どの方法が適するかは、物件の状態、相続人の意向、資金計画によって異なります。一つの方法に絞る前に、複数を並べて比較することをお勧めします。
空き家のまま持ち続けると
判断を先送りにする間も、費用は発生し続けます。
- 固定資産税・都市計画税 — 使っていなくても毎年かかります
- 管理の手間 — 通風、草刈り、郵便物の処理。遠方だと交通費もかかります
- 建物の劣化 — 人が住まない家は傷みが進みます
- 管理費・修繕積立金 — マンションの場合は毎月かかり続けます
加えて、管理の状態によっては税の扱いが変わります。空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律は、令和5年12月13日に施行されました【MLIT-001】。
特定空家等について、市区町村長から勧告を受けた特定空家の敷地は、住宅用地特例の適用対象から除外されます【MLIT-002】。
改正法の施行後は、管理不全空家等についても、市区町村長から勧告を受けた管理不全空家の敷地は、住宅用地特例の適用対象から除外されます【MLIT-002】。
管理不全空家等は、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態が指導の対象となり、指導しても改善されない場合に勧告の対象となります【MLIT-002】。
つまり、いきなり特例から外れるわけではなく、指導を経て勧告を受けた場合に除外されるという仕組みです。住宅用地特例は小規模住宅用地で課税標準が6分の1に減額される制度のため【MLIT-002】、除外されると土地の固定資産税の負担は大きく変わります。
確認ポイント
指導や勧告の判断、実際の税額は、物件の状況および自治体によって異なります。具体的な取り扱いは、物件所在地の自治体窓口でご確認ください。
進め方の目安
- 1. 遺言書の有無と遺産分割協議の状況を確認する
- 2. 登記の名義と相続人の意向を確認する
- 3. 住宅ローン・抵当権の有無を確認する
- 4. 片付けや解体を始める前に、現況のまま査定を受ける
- 5. 売却・賃貸・保有の選択肢を比較する
- 6. 方針が決まったら、必要な手続きを進める
4番目を先に済ませておくと、「片付けにいくらかけるべきか」「解体は必要か」を、金額を見ながら判断できます。
よくあるご質問
家財や荷物が残ったままでも相談できますか
ご相談いただけます。買主が不動産会社の場合、残置物を含めて引き渡せることがあります。物件の状態や引き渡し条件によって扱いが変わるため、まず現況を確認したうえでご案内します。
相続登記が終わっていなくても売却の相談はできますか
ご相談いただけます。ただし、売買契約や引き渡しの手続きには登記の整理が必要です。遺言書の有無、相続人の範囲、分割方法によって進め方が変わるため、早めに状況を確認します。
相続人申告登記をすれば、相続登記はしなくてよいのですか
相続人申告登記は、期限内に申し出ることで申請義務を果たすための制度です。これによって不動産の名義が変わるわけではないため、売却などの手続きを進めるには別途、相続登記が必要です。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に登記をすることになります。
共有名義でも売却できますか
共有者全員の同意があれば売却できます。持分のみのご売却については、当社では対応しておりません。
遠方に住んでいても相談できますか
ご相談いただけます。物件の所在地を確認したうえで、現地確認や手続きの進め方をご案内します。
建物を解体してから売ったほうが高く売れますか
物件によって異なります。解体すると住宅用地特例の対象外となり、土地の固定資産税が変わる場合があります。また、再建築が難しい土地では建物があることが価値になることもあります。解体前にご相談ください。
売却を決めていない段階でも相談できますか
はい。査定額をご確認いただいたうえで、売却しないという判断も可能です。相談・査定は無料です。
この記事のまとめ
- 片付けや解体より先に、遺言書・遺産分割・名義・残債を確認する
- 相続登記には3年の期限があり、施行前に相続した未登記の不動産は令和9年3月31日が期限
- 相続人申告登記は義務を果たす制度で、これだけでは名義は変わらない
- 費用をかける前に現況のまま査定を受けると比較ができる
- 出口は5つ。住み続ける必要があるかどうかで大きく分かれる
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千葉・東京を中心に、不動産のご相談を承っています。ご状況に応じて、次の窓口をご用意しています。売却を決めていない段階でも構いません。
査定価格および買取価格は物件ごとに異なります。物件の状態、権利関係、法令上の制限等により、ご希望に沿えない場合があります。売却の成立、特定の価格、居住の継続を保証するものではありません。
出典・情報確認日
本記事の事実情報は、次の公式資料を実際に確認して記載しています。情報確認日は2026年8月2日です。制度や税の取り扱いは変更される場合があるため、各出典の更新日と、閲覧時点の最新情報をご確認ください。
遺言書の検認
- 遺言書の検認(公正証書遺言および遺言書情報証明書は検認不要)/裁判所【CTS-001】
相続登記
- 相続登記の申請義務化/法務省【MOJ-001】
空家対策・住宅用地特例
- 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(改正法は令和5年12月13日に施行)/国土交通省【MLIT-001】
- 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 概要資料 p.7/国土交通省【MLIT-002】